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第18回 21世紀に入る現在の状況

ビルガー・マッセン

21世紀に入る現在の状況

21世紀にさしかかかっている現在、ラ・クールの風車実験から100年、風車に対して新たな取り組みが始まった1979年から約20年。風車発電は私たちのエネルギー政策のカギとなるまで発達した。2005年まで150万kwが陸上に、2030年までに400万kwが海上にという目標に対し、陸上には既に170万kw、海上には7.5万kwのデモンストレーション施設が実証運転中である。ミデルグルンデン海上風車は電力会社と風車協同組合との共同事業であった。

今日の風車産業は1999年の売上高110億クローネ、1.5万人以上の雇用を生むデンマークの主要産業である。風車発電メーカーの最大2社はコペンハーゲン株式取引所に上場されている。最も成功したヴェスタスの全株価は1999年で130億クローネである。この2?3年、発電事業では国際的にも資本的価値においても風車発電分野が増大しつつある。最近5年間の平均成長率は約40%を達成していて、それは今までのどの発電技術より勝っている。力強い成長をするプロフェッショナルな業界であるが、先は常にリスクに満ち不透明である。意義の大きい事業であるだけにその運営は重い責任を伴う。
はたしてこれからの20年風車発電はどうなるのだろうか・・。

ダビデとゴリアテ

1999年、この数ヶ月前におきたNEGミコンの経営的危機は一つの警告だった。会社は自己資金を失い、7億5千クローネを補填しなければならなかった。幸い資金の補填はこの2ケ月の間に公的機関でまかなわれた。それは今までどの企業にもなかった程多額であった。 かつてのカリフォルニアの風力ラッシュの後に起きた風車発電産業の経営危機においては、危機に瀕した会社に対してどの銀行や年金基金も融資してくれるということはなかったものだ。規模の大きさと社会的責任は風車発電産業にとっても重要である。今まで風車発電産業はずっと人々の同情を受けて成長してきた。いうなれば「サムソンとゴリアテ効果」(強大な相手と戦う弱小な者への同情)ともいえるものは、もはやなくなったといえるかもしれない。今日の風車発電産業は高度の専門性を持つ産業として、他の産業界や公的組織、政党と対等に渡り合い、対話を続けている。

短期的視点からの風車の未来

今日非常に大型で大出力の風車が普及し、風車の数は約5700台総出力は170万kwである。これからの10年間に総出力は250?300万kwになるであろうが、風車の数そのものは約3000台くらいになるだろう。海上風車は2008年までに75万kwが建設され、2030年までには400万kwになるだろう。たぶん、電力会社のデモンストレーション・プロジェクトが進むよりはるかに早くエネルギー企業 による海上風車がさかんに行われるようになるだろう。

今日風車には政治的支援策は無い。だが、海上風車の建設を進めるためには政府と国会の適切有効な後押しが求められると思われる。もしそうなれば30年もかからないであろう。EUに属する国の中で我が国がクリーンな電力に替わる可能性は、私たちの国の海域でどれだけのペースで海上風車が実現するかと言うこと深い関係があるだろう。

受け入れられた風車発電

この25年間に成長を遂げた今までの風車発電へのイメージは揺籃期のそれである。来る25年間の社会の人々にとって、もはや「私たちは風車を選択すべきか」という意志を問うものではない。 答えはとっくに決まっている。私たちはもう風車を持っている。そして、それともっと良くつきあうにはどうしたらよいのか、という点に絞られているのだ。

もう、風車のために使える土地があまりないのでないか、という論議がある。風車がより大型になり、出力が大きくなっていると言うことは、長期的には風車のために要する土地はより少なくてもよい、ということになる。それは当然、古い施設を解体して新しい風車を建てるということになるだろう。年月をかけて緩やかに行えば、もし社会的に許されれば法的規制で行うことも出来る。デンマークには風車の適地は実に多い。風車のコスト低減によって国内の風力潜在量は大きくなった。まだ風車はそれ程多く作られているわけではない。平均1000kwで稼働率28%とすれば3000台の風車で73億kwh発電可能でデンマークの電力需要の18%に相当する。それはわずか今日有る風車の半数にしかすぎない。

これから育ち2020年に成人する世代にとって風車は風景の一部であり、 私たちやそれ以前の世代にとっての電話線や配電線と同じようなものであろう。さらに2030年に400万kwと見込まれる海上風車の建設が加わる。もし、‘ヨーロッパ・グリーン電力の要請’が実現したら、この見込みは2020年に現実になることになる。海上風車の主な規制は海岸から最低10km沖合でなければならず、障害物として気づくことの出来るような注意設備を設けなければならないことである。

長期的展望

アンカー・ヨアンセン政権のとき作られた「エネルギー・プランEP?81」で当時としては殆どユートピア的な風車のシナリオが描かれている。2000年にはデンマークの電力需要の10%を風車で賄おうというものである。新しい行動シナリオ研究「ウィンド・フォース10、1999」はブルッセルのヨーロッパ風力エネルギー協会、エネルギーと開発フォーラム、グリーンピース・インターナショナルが加わった持続可能エネルギーセミナーで発表された。その内容は年間20?30%の成長率を見込み、グローバルには2020年までに12億kwを見込むという野心的なものである。

デンマーク風力産業の市場占有率が30%まで弱くなってきた。にもかかわらず年間輸出量として2500から3000万kw、額にして1000億クローネから1250億クローネを見込んでいる。グローバリゼーションにより 世界のより大きな市場に投げ込まれ、産業としてもより大きく洗練されたものになるだろう。

水晶球を覗いて風車発電の未来を占えば、わずか20年前の短い歴史を振り返って見たのと同じくらい魅力的なものとして映る。

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